インタビュー A.ランゲ&ゾーネ商品開発ディレクター「アントニー・デ・ハス

細かなリファインが際立つ、新しい“ルーメン”
A.ランゲ&ゾーネ商品開発ディレクター。1967年、オランダ生まれ。89年にクリスチャン・ホイヘンス技術学校を卒業後、IWCを経て、ルノー・エ・パピ(現オーデマ ピゲ ル・ロックル)に入社。リピーターやトゥールビヨンといった複雑時計の設計に携わる。2004年、A.ランゲ&ゾーネに入社。ティノ・ボーベとともに、さまざまな新製品の開発に当たる。14年より現職。商品開発ディレクターとして、ムーブメントだけでなく、外装やデザインまでコントロールする。
「この時計が搭載するムーブメントは『ツァイトヴェルク・デイト』の進化形だ。ただし、デイト表示を取っただけではなく、地板なども設計し直した」。併せて、蓄光塗料を載せるにあたって、細かなモディファイを加えたという。

「時・分の表示ディスクに蓄光塗料を載せると厚みが増して、干渉してしまう。そのため、ルーメンはディスク同士の間隔を少し広げた。ただし、オデュッセウスほど塗料を厚くするとやはり引っかかってしまうため、印字は少し薄くした」

 時・分のディスクを見ると、蓄光塗料を盛った印字は周囲にまったくにじみがない。一度、ホワイトを印字した後、その上から蓄光塗料を載せているとのこと。蓄光塗料の印字の質は、似たものの中でずば抜けて良い。文字盤そのものもかなり良質だ。

「厚さ1mmのサファイアクリスタルをレーザーでくりぬいて文字盤にしている。表面処理をした後、印字はスイスで行っている。歩留まりは厳しくて、50枚製造した文字盤のうち、27枚しか残らない」

 ケースの作りにも感心させられた。素材に選ばれたハニーゴールドは、硬くて退色しにくいが、溶接ができない。ラグとケースの隙間は溶接仕上げと勘違いするほど密だが、デ・ハス曰く「これも今までと同じくネジ留め。やはり溶接は不可能だよ」とのこと。蓄光塗料にせよ、サファイアクリスタル文字盤にせよ、ハニーゴールドケースにせよ、今までにあるものだ。しかし、仕上げはもう一段良くなった。

 文字盤の低い歩留まりが示す通り、本作はあくまで好事家向け、より正確に言うとA.ランゲ&ゾーネ コピーのコレクター向けの限定品だ。しかし、搭載するムーブメントは、今後通常版に転用されるだろう。

「昔のルモントワールは効率があまり良くなかったので、改善したかった。ルモントワールを1分間で作動するように改めて、テンワの慣性モーメントも少し落とした。以前は22.85㎎/㎠だったが、今は17㎎/㎠。テンワ自体は変えなかったが、マスロットを少しだけ軽くした。その結果、時・分が切り替わる際も振り角は落ちないし、パワーリザーブも約72時間に延びたよ」

https://www.supakopitokei.com/alangesoehne_copy206.html

 抜かりなく細部を詰めてきたA.ランゲ&ゾーネ。本作の価格は途方もなく高いが、その仕上がりには脱帽だ。

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